教育における「レレバンス」とは何か? Francia Randriatiana
レレバンス(関連性)は、教育や訓練について議論する際にキーワードとなっています。学校教育が学習者にとって関連性のある授業を目指す際や、職業教育が実際の職場で活用できる技能を訓練しようとする際、カリキュラムや教授法が生徒や職場に対していかにレレバンスを持てるかが議論されています(Orthner et al.、2013)。しかし、「教育のレレバンス」とは具体的に何を意味するのかについて、共通のコンセンサスは得られていないのが現状です。レレバンスという言葉は、広く様々な意味で使われており、整理する必要があります(Stuckey et al.、2013)。
レレバンスはここ数年で新しく生まれた概念ではなく、以前から議論されてきました。代表的な教育学者としてジョン・デューイが挙げられます。彼は生徒の学習、動機づけ、学業成績に対するレレバンスの意味を考察し、学校での学習と学習者の学校外での経験を結びつけるという考えを導入し、教育はもっと徹底的に子供の日常的な体験から始めるべきだと提案しました。デューイは、「学校の活動と子どもの生活体験との間に最初のつながりがなければ、真の学習と成長は不可能である」と述べ、教育の生活体験へのレレバンスを強調しています(Dewey, 1956 cited in Stuckey et al.)。
デューイの著作に倣って、他の多くの学者、特に学習動機に関する研究者たちは、ここ数十年の間に教育における関連性の問いを広げていきました。その結果、教育現場におけるレレバンスとその使用には、様々な意味が与えられるようになり、レレバンスは、意義、興味、動機づけと広義にとらえられています。例えば、教育が有意義で、学習者にとって良い結果をもたらすものはレレバントであると言えます。また、学校での学習内容は、生徒の日常的経験、目標、興味にとって個人的に意味のあるものと関連する(レレバントである)必要があります(Albrecht and Karabenick, 2018)。
同様に、レレバンスを「興味」と同じ意味として解釈する傾向もあります。科学教育におけるレレバンスについての研究では、科学教育の内容が生徒の興味や認識と正確に一致しているかどうかが議論されています(Stuckey et al.,2013)。学校での学習内容と日常生活での関心事とが繋がっている事を理解させることで、学習意欲や達成感を高めることができるという認識が広まっています。
また、レレバンスは、生徒の進路希望に着目して、「重要性や有用性」という観点で議論されます。効用価値理論では、学生が価値を見出す情報の文脈の中で新しい知識が提供されるとき、学生は最もよく学ぶと言われています(Orthner, 2013)。デューイの時代までさかのぼると、教育は個人のキャリア願望に関連すべきであるということが最も一般な認識でした(Albrecht and Karabenick, 2018:3)。科学教育における効用価値に関する研究では、学習中のSTEM(科学・技術・工学・数学)コンテンツが自分の生活や目標に役立つこと、つまり「効用」を確認できるようにすることで、生徒の興味や学習が向上することが確認されています(Leyva et al.,2022)。
Stuckey et al.(2013)は、科学教育におけるレレバンスの意味を検討する中で、レレバンスという用語には、「個人、社会、職業領域に由来するもの」という異なる3つの次元が含まれていることを指摘しました。レレバンスの個人的次元は、「個人にとっての(科学)教育のレレバンスには、学習者の好奇心や興味にマッチし、現在および将来の日常生活に対処するために必要かつ有用なスキルを生徒に提供し、知的能力の発達に寄与することが含まれる」ことを意味します(Stuckey et al.,2013)。社会的次元は、教育と社会の相互依存と相互作用を理解し、社会参加のためのスキル、社会の持続的発展に貢献するための能力を開発することによって、生徒の自己決定と社会での責任ある生活への準備に基づく(科学)教育で構成されています(Stuckey et al.,2013)。そして職業的側面は、将来の職業やキャリアのためのオリエンテーションを提供すること、さらなる学術的または職業的訓練のための準備、正式なキャリアの機会を増やすことを意味します(Stuckey et al.、2013)。
このように、教育のレレバンスに関する議論は興味や動機と結びつくように多義的であり、個人、社会、職業それぞれの次元でレレバンスが細分化されることが指摘されています。授業や訓練のカリキュラムが学習者にとって関連性のあるように考える際に、この多義性と個人、社会、職業それぞれの次元を念頭に置くことが重要であると言えます。