Hot Issues of Skills Development

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SKY[Skills and Knowledge for Youth] ホーム Hot Issues of Skills Development 「自己効力感」とはなにか

「自己効力感」とはなにか 山崎裕次郎

「試験に合格すること」「英語が話せるようになること」「昇進すること」「禁煙すること」など、目標を立てて行動することは、私たちの日常においてよく行われます。目標に向けて日々取り組んでいくことを決めても、数日でやめてしまい、継続しないことがしばしばあります。果たしてその継続のためには何が重要なのでしょうか。

Bandura(1977)は、目標達成のために重要なのは「自己効力感」であるといいます。「自己効力感」とは、「自分ができること」への期待を指します。Bandura(1977)は、目標達成に関する期待を「結果期待:随伴性認知」と「効力期待:自己効力」に分けています。「結果期待」とは、ある行動から「特定の結果をもたらす」という期待であり「毎日勉強すれば合格する」や「毎日練習をすれば試合で勝てる」というような「結果への期待」を指します。「効力期待」とは達成に向けた行動それ自体を「自分ができる」という期待であり、「毎日単語を10個覚えることができる」や「毎日50回素振りができる」というような、「行動ができる」ことへの期待を指します。Bandura(1977)は、後者の「自分にできること」への期待という「自己効力感」が、目標達成に向けた行動の継続において重要であるといいます。

自己効力に対して影響する要因をBandura(1977)は4つ挙げています。1つ目が「行為情報」です。「行為情報」とは、成功体験や失敗体験といった過去の経験が「できること」を決めるための要素となることを指します。2つ目は「代理情報」です。誰か他の人が行っている行為を見て、「自分にもできること」を見つけていき自己効力の情報となります。だれかが目の前でやってみせることで、「これならできそうだ」と思い、自己効力を高めることができます。「代理情報」はBandura(1971) の提唱した観察学習のモデリング学習と関連し、発展しています。3つ目に、「言語的説得」が挙げられています。「あなたならできる」と他の人から声をかけられることや自己暗示をすることで自己効力を高めることができます。最後の4つ目が、「情動的喚起」です。リラックス状態だと行動を思うようにできることや、緊張を意識するとより緊張してしまうように、情動が自己効力に影響を与えることが指摘されています。

目標を達成するにあたり、「自己効力感」が重要である認識はその後も広がり、自己効力感を測定する研究が進められてきました。日本において、自己効力感を測定する研究は坂野ら(1986)による「一般性セルフ・エフィカシー尺度」がつくられ、その後、成田ら(1995)によって「特性的自己効力感尺度」、三好(2003)による「主観的な感覚としての人格特性的自己効力感尺度」が作られてきました。海外においても、Generalized Self-Efficacyとして、個人の特性としての自己効力感を測定する研究が進められてきました(Passmore, 2004)。

一方で、この「自己効力感」は、個人の特性なのか、固有の目標に持つものであるのかについて議論が分かれており、三好・大野(2011)は、特定の課題への自己効力感は、個人の性格として持つ自己効力を規定している立場と、個人の性格としての自己効力が、状況への自己効力を規定する立場が併存しているといいます。ある目標に達成した人が別の目標に対しても自己効力感をもつような汎用性がどれだけあるのか、それとも個人の性格として自己効力感を持っているのか、自己効力感の一般性は今後も検討していく必要があります。

 

参考文献

  • Bandura, A. (Ed.) 1971 Psychological modeling: Conflicting theories. Chicago: Aldine Atherton.
  • Bandura, A. 1977 Social Learning Theory. Prentice-Hall, Inc.
  • 成田健一・下仲順子・中里克治・河合千恵子・佐藤眞一・長田由紀子.1995.「特性的自己効力感尺度の検討」『教育心理学研究』43. 306−314.
  • 三好昭子. 2003.「主観的な感覚としての人格特性的自己効力感尺度(SMSGSE)の開発.『発達心理学研究』14(2).172−179.
  • 三好昭子・大野久. 2011. 「人格特性的自己効力感研究の動向と漸性発達理論導入の試み」『心理学研究』81(6).631−645.
  • Passmore, A. 2004. A Measure of Perception of Generalized Self-Efficacy Adapted for Adolescents. Occupation, Participation and Health. 24(2), 64-71.
  • 坂野雄二.1989.「一般性セルフ・エフィカシー尺度のー妥当性の検討―」『早稲田大学人間科学研究』2(1).91−98.