Hot Issues of Skills Development

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SKY[Skills and Knowledge for Youth] ホーム Hot Issues of Skills Development デジタルカリキュラムとは何か

デジタルカリキュラムとは何か Francia Randriatiana

現在、能力開発、教育など様々な分野でデジタル技術の発展が目覚ましくなっています。新型コロナウイルスの流行により、世界のほとんどの教育システムにおいて、新しいテクノロジーとデジタル化の重要性が加速しています。多くの国々で、教育を提供する従来の方法から、デジタル化された教育実践へと移行するよう、学校に対して圧力が高まっています。今まで使用してきた教科書などの教材も電子化されたり、タブレットに代替されたりとデジタル化が進んできています。そのようなことから、デジタルカリキュラムの重要性が顕著になってきており、世界各国の教育システムでより主流化することが推測されます。

そもそもデジタルカリキュラムとは何でしょうか?デジタルカリキュラムという言葉自体が広範な事柄を抱合しているため、明確に定まっているわけではありません。Al-Awidi and Aldhafeeri(2017)をはじめとする研究者は、デジタルカリキュラムを「カリキュラムの提供をサポートし、教育目標の達成を促進するために多くの形態をとるあらゆるデジタルコンテンツ」と定義しています。同様に、Puttickら(2015)は、デジタルカリキュラムを「紙媒体の教材のPDFへの変換から、オンデマンドサポートや学生のニーズに基づくカスタマイズ機能などの革新的で創造的な機能を備えたWebベースのカリキュラムにまで及ぶデジタル教室教材」と表しています。

デジタルカリキュラムへの関心は、物理的な教室を超えた可能性についても注目されています。デジタルカリキュラムは、混合型学習環境やオンライン学習の環境を提供することができます。これに伴い、Remillard(2016)は、デジタルカリキュラムの環境を2種類に分類しています。1つ目は、機材(コンピュータ、タブレット、スマートフォンなど)、学習プログラム(Khan Academy、Algebra In Action、Learn Zillionなど)、インターフェース(学習管理システム(LMS)など)を含むデジタル設計されたカリキュラムリソースに関するものです。2つ目は、「インターネットを通じて、教師が利用できる潜在的なカリキュラムリソースの膨大なコレクション、マーケティングされたもの」(Remillard, 2016)を指します。

なぜデジタル・カリキュラムが重要なのでしょうか?デジタルカリキュラム/リソースの大きな利点は、簡単に改訂・更新できるため、教科書などの印刷物の再印刷や再配布のコストをかけずに、時代や環境に応じた教材を提供できる点が挙げられます(Fletcher et al.、2012:7)。さらに、デジタルコンテンツは、テキストや高画素のグラフィック、ビデオ、プレゼンテーション、アニメーション、シミュレーション、バーチャルラボ、オンラインアセスメントなど、豊かで魅力的な学習資源を提供します(Fletcher et al.)。 さらに、従来のカリキュラムとは異なり、デジタルカリキュラムを使用する利点として、「より活発なインタラクティブ性、より個別ニーズに沿う学習教材の提供(学習者がデジタル教材を通して個別に進める)、低コストで簡単なアクセス、評価システムの組み込みの可能性」があるとChoppin and Borys (2017) は報告しています。スキル開発の面では、デジタル化は労働者の学び直しの機会を提供し、生涯学習に対して貢献することができます(ILO, 2021)。

このようにデジタルカリキュラムは、その有効性と重要性が指摘されていますが、いくつかの課題が残っています。まず、完全なデジタルカリキュラムへの移行は、特に学校や家庭でのインターネットへのアクセスが必要となるため、そのためのネット環境整備が必要となります(Choppin et al.、2014)。また、教師や生徒がデジタル機器を適切に使用できるかというデジタルリテラシーの課題があります。特に経験豊富な教師ほど、デジタルカリキュラムの機能性に苦戦し、完全に導入することに消極的な姿勢を見せる傾向があると指摘されています(Al-Awidi and Aldhafeeri, 2017)。Puttickら(2015)が行った研究では、教室でデジタル教材に取り組む際の教師の役割についての課題が示されています。この研究では、教室での指導と学習の権限はどこにあるのか、教師あるいはデジタルを用いた教材はどの程度学習に介入すればいいのかが議論されています。デジタル教材を使って授業を行う際、教師は自分の役割を理解するのに苦労します。また、デジタルカリキュラムを全面的に採用すると、生徒の間に存在するデジタル機材へのアクセスの差によってデジタルデバイドを引き起こし、教育機会の格差をもたらす危険性があることも報告されています。

このような課題はある一方、 デジタルカリキュラムは、教育や学習のプロセスを促進するための斬新で革新的な方法を提供するため、今後も注目されることが考えられます。Fletcher et al. (2012)は、デジタル・カリキュラムの開発と実施の成功要因として、(1) デジタル機材のための持続可能な資金、(2) 安定したインターネット接続、(3) 最新の政策、(4) デジタル教育を準備した教育者、 (5) 品質管理とユーザビリティ、を挙げています。デジタルカリキュラムに関する課題を解決し、最大限に活用するために上記の成功要因を参考にしていくことが重要であると言えます。

 

References:

  • Al-Awidi, H., & M Aldhafeeri, F. (2017). Teachers’ Readiness to Implement Digital Curriculum in Kuwaiti Schools. Journal of Information Technology Education: Research, 16, 105–126. https://doi.org/10.28945/3685
  • Choppin, J., & Borys, Z. (2017). Trends in the design, development, and use of digital curriculum materials. ZDM, 49(5), 663–674. https://doi.org/10.1007/s11858-017-0860-x
  • Choppin, J., Carsons, C., Bory, Z., Cerosaletti, C., & Gillis, R. (2014). A Typology for Analyzing Digital Curricula in Mathematics Education. International Journal of Education in Mathematics, Science and Technology, 2(1). https://doi.org/10.18404/ijemst.95334
  • Fletcher, G., Schaffhauser, D, & Levin, D. (2012). Out of Print: Reimagining the K-12 Textbook in a Digital Age. Washington, DC: State Educational Technology Directors Association (SETDA)
  • ILO (2021) Digitalization of national TVET and skills systems: Harnessing technology to support LLL.: Geneva: ILO.
  • Puttick, G., Drayton, B., & Karp, J. (2015). Digital Curriculum in the Classroom: Authority, Control, and Teacher Role. International Journal of Emerging Technologies in Learning (IJET), 10(6), 11. https://doi.org/10.3991/ijet.v10i6.4825
  •  Remillard, J. T. (2016). Keeping an Eye on the Teacher in the Digital Curriculum Race. In M. Bates, & Z. Usiskin, (Eds.), Digital Curricula in School Mathematics (pp. 195-204). Greenwich, CT: Information Age Publishing.