技能認定制度によるスキルの可視化 山崎裕次郎
現在スキルを身に付ける機会は、学校のみならず、仕事場、トレーニングセンターなど、様々な場所で提供されています。それに伴い、どのようなスキルを習得したのかを示す手段も重要となっております。スキルを身に付けていたとしても、それを示す手段がなければ、習得したスキルを十分に活かすことができる仕事に就くことが難しくなります。習得したスキルを示す手段の一つとして、スキル認定制度が注目されています。
スキル認定制度は、雇用主、トレーニング供給者、公的機関から証明書などの発行により習得したスキルを可視化させる制度のことで、学校教育外の様々な学習に対応したスキルの認知を目的としています (Jiri, 2016)。Singh(2011)はスキル認定制度が特に途上国において重要であることを主張しています。途上国ではインフォーマルセクターの割合が多く、彼らは徒弟制、非公式のトレーニングセンター、企業内訓練を主な手段としてスキルを習得しており、学校の卒業証書のみではどのようなスキルを持っているのか判断が難しい状況において、既存の学校制度を拡充するのみならず、スキル認定制度によるボトムアップのアプローチも重要である点を指摘しています(Singh, 2011)。OECD (2010)は、スキル認定自体が生産性に直接的に貢献することはない一方、各個人が自分に合う仕事に従事できるようにする点、求められているスキルを可視化する点が生産性の向上につながることを指摘しています。
現在アフリカ各国においても、独自のスキル認定が実施されています。Hofmann(2011)は、ベナンとガーナの事例を紹介しています。ベナンでは、地方政府が地方のビジネス協会と協定を結び、年に2回、実地研修終了の評価を共同で実施しています。 評価委員会は、政府、企業団体、保護者団体の代表者で構成されており、 合格した候補者は証明書の授与と同時に、名前が地元のラジオ局にて放送されます。ガーナ国立縫製被服協会は、年に2回、卒業生を対象に全国的な実技スキルテストを実施しています。 試験は、全国の約50のセンターで開催され、2000年以降、約65,000人の実習生がこの試験を受けています。合格した候補者は、ゾーンレベルで協会が主催する卒業式で証明書を授与されます。このように、各国独自のスキル認定制度は、学校外で習得したスキルの可視化することができるため、習得したスキルを活かす仕事に就くために重要な役割をもっています。
References:
Hofmann, C. (2011). “Upgrading Informal Apprenticeship-Challenges and Achievements” in K. King (ed.) Towards a New Global World of Skills Development? TVET’s Turn to Make its Mark. Norrangnews 46. Geneva.
Jiri, B. (2016). Strengthening skills recognition systems: recommendations for key stakeholders. International Labour Office, Skills and Employability Branch. Geneva: ILO.
OECD (2010). Recognizing non-formal and informal learning: Outcomes, policies, and practices. http://www.oecd.org/edu/innovation-education/recognisingnon-formalandinformallearningoutcomespoliciesandpractices.htm
Singh, M. (2011).”Skills Recognition in the Informal Sector” in K. King (ed.) Towards a New Global World of Skills Development? TVET’s Turn to Make its Mark. Norrangnews 46. Geneva.