Hot Issues of Skills Development

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SKY[Skills and Knowledge for Youth] ホーム Hot Issues of Skills Development ソフトスキルとは何か① ハードスキルとソフトスキル

ソフトスキルとは何か① ハードスキルとソフトスキル Francia Randriatiana

近年ソフトスキルが、研究者や実務者の間で大変注目されています。今日の競争の激しい労働市場において、雇用主は、ハードスキルとして知られている、技術的または特定の職種に限定されたスキルしかなく、他の重要なスキルがない人材にもはや興味を持ちません。そして、雇用者が特に期待するのがソフトスキル、すなわち円滑なコミュニケーションやチームワークができる能力、状況適応能力、新しい技能を学び続ける能力です。以前とは異なり、現在では、ソフトスキルがハードスキルと同様に重要であるという認識が広まっています。いくつかの研究(Grugulis and Vincent,2009など)においても、雇用主がテクニカルスキルよりもソフトスキルを重視し始めていることが強調されています。このような傾向にもかかわらず、ソフトスキルの明確な定義はないようで、研究者達はその意味についてほとんど合意がないまま使用しています(Matteson et al, 2016)。

「ソフトスキル」の名前の付け方や定義も様々で、分類方法も様々です(Succi, 2019)。ソフトスキルに相当する概念の使い方も、国によっても異なります(Marin-Zapata et al, 2021)。例えば、オーストラリアでは、別の場面ではソフトスキルと呼ばれるような概念をキー・コンピテンシー、汎用的スキル、雇用可能スキルと呼ぶ人もいます。アメリカではそれに相当する言い回しとして、雇用可能スキルや職場のノウハウといった表現が使われたり、一方欧州諸国では、キー・スキル、コア・スキル、ライフ・スキル、移転可能スキル(イギリス)、トランスバーサル(横断的)・スキル(フランス)、キー・コンピテンシー、一般的コンピテンシー(ドイツ)、キー・コンピテンシー、エッセンシャル(必須)・コンピテンシー(ポルトガル)、汎用的コンピテンシー(スペイン)などの使用も見られます(Marin-Zapata et al., 2021)。

様々な研究(Cinque, 2015; Succi,2019; Succi& Canovi,2020; Marin-Zapata et al. 2021)で示されている様に、ソフトスキルは国際機関によっても呼び方が異なります。例えばライフ・スキル(世界保健機関 WHO, 1994), トランスバーサル(横断的)スキルクリティカル・コンピテンシー社会へ出る為のスキル(経済協力開発機構(OECD),2003,2012,2015)などです。
次の表に、ソフトスキルが国や国際機関によってどの様に呼ばれているかをまとめました。

国・機関 名称
オーストラリア 重要な/キー・コンピテンシー, 汎用的スキル、雇用可能スキル
アメリカ 雇用可能スキル、職場のノウハウ
イギリス キー・スキル(イングランド・アイルランド)、コア・スキル(スコットランド)、ライフ・スキル、
移転可能スキル、クロス・コンピテンシー
フランス トランスバーサル(横断的)・コンピテンシー
ドイツ キー・コンピテンシー、一般的コンピテンシー
その他欧州諸国 キー・コンピテンシー(オーストリア、ベルギー、デンマーク)、必須コンピテンシー(ポルトガル)、汎用的コンピテンシー(スペイン)
世界保健機関 ライフ・スキル
経済協力開発機構 トランスバーサル(横断的)スキル、クリティカル・コンピテンシー、社会へ出る為のスキル

出展:(Cinque, 2015) 及び (Marin-Zapata et al.,2021)より引用

この様なソフトスキルの異なる学名が、私たちのソフトスキル理解をより複雑にしているともいえますが、おそらくその概念の本質を理解するには、「ハードスキル」と対比するのが一番の方法でしょう。「ハード」と「ソフト」に分類されるスキルの正確な出自は不詳ですが、Marin-Zapataら(2021)が引用したWhitemore and Fry(1974)の研究結果は、私たちに何らかのヒントを与えてくれるように見えます。著者(Whitemore and Fry,1974)は、「ソフトスキルとは、機械の使用に直接かかる技術ではなく、様々な仕事の場面に応用できる、業務に関連した重要なスキルである」と定義しました。この定義によれば、ソフトスキルとは、特定の業種や専門性において求められる業務特定型のスキルとは対照的に、汎用的なスキルであるとされています。一方、「ハードスキル」は、仕事に必要な具体的な専門技術やノウハウのことで、業種や役職に特化したものと定義されています。例えば、会計士には会計実務の専門知識と技術が必要ですが、ウェブデザイナーにはこれらの能力は不要です。この様に、業務間で移転可能なスキルかどうかという点が、ソフトスキルの最も明確な定義的側面の1つです(Fernandez & Liu, 2019)。

References:

  • Cinque, M. (2015). “Lost in translation”. Soft skills development in European countries. Tuning Journal for Higher Education, 3(2), 389. https://doi.org/10.18543/tjhe-3(2)-2016pp389-427
  • Fernandez, F., & Liu, H. (2019). Examining relationships between soft skills and occupational outcomes among U.S. adults with—And without—University degrees. Journal of Education and Work, 32(8), 650–664. https://doi.org/10.1080/13639080.2019.1697802
  • Grugulis, I., & Vincent, S. (2009). Whose skill is it anyway?: ‘Soft’ skills and polarization. Work, Employment and Society, 23(4), 597–615. https://doi.org/10.1177/0950017009344862
  • Marin-Zapata, S. I., Román-Calderón, J. P., Robledo-Ardila, C., & Jaramillo-Serna, M. A. (2021). Soft skills, do we know what we are talking about? Review of Managerial Science, 16(4), 969–1000. https://doi.org/10.1007/s11846-021-00474-9
  • Matteson, M. L., Anderson, L., & Boyden, C. (2016). “Soft Skills”: A Phrase in Search of Meaning. Portal: Libraries and the Academy, 16(1), 71–88. https://doi.org/10.1353/pla.2016.0009
  • Succi, C. (2019). Are you ready to find a job? Ranking of a list of soft skills to enhance graduates’ employability. 17.
  • Succi, C., & Canovi, M. (2020). Soft skills to enhance graduate employability: Comparing students and employers’ perceptions. Studies in Higher Education, 45(9), 1834–1847. https://doi.org/10.1080/03075079.2019.1585420