#2 リサーチアシスタント

山崎裕次郎

多様なアプローチからなるSKYプロジェクト、
その面白さをお伝えしていきたい

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SKY[Skills and Knowledge for Youth] ホーム Interview

-SKYプロジェクトにはどう関わっていますか?

リサーチアシスタントをしています。論文の要約や調査、広報や「Hot Issues of Skills Development」の執筆など、プロジェクト運営の中で専門知識が求められる業務を行います。
普段はSKYプロジェクトを主導されている山田先生の下で、博士後期課程に所属しています。

「Hot Issues of Skills Development」について教えてください

「途上国における人材育成」「スキルや知識」に関する研究や専門知をざっくりと説明する連載記事です。このテーマは汎用性が高く、遠隔教育ICTといったこの時代らしい話題とも絡めたりしています。新しい分野を勉強したり専門誌や国際機関のホームページを見たりして、そこで見つけた「少し専門的で分からないキーワード」をかみ砕いて説明するイメージで執筆しています。
研究者の知識は専門的で、言葉1つをとっても細かく意味や文脈を理解する必要があります。しかし、一般の多くの方にとって、それらを細かくひとつひとつ学ぶために割く時間はあまりありません。そのため、何冊も本を読んでもらうことをするのではなく、多少言い足りない部分があっても一般の方にも「面白いな」と思っていただけるような、専門知と興味・教養を橋渡しするものとして記事を発信したいと思っています。

-ご自身の研究テーマについて教えてください

従来の教育学では教育者の視点からカリキュラムや学習空間が考えられてきました。「こう教えると効率的に学べるよ」とか「話を聞いてくれるよ」というのはテクニカルな面では重要ですが、私個人は、学習者の解釈や意味を作ることによる「学び」に興味をもっています。それは教育者の意図とは違っていたり、教育者の有無関わらず、勝手に起こります。そのようなことから、教育の議論を学校を前提にしない立場として広く見て、零細産業で広く行われている徒弟制や職場内訓練に私自身の研究は目を向けています。

-具体的にはどんな事例があるでしょうか?

徒弟制度のような師匠と弟子の関係は、師匠は背中で語り、弟子は師匠の背中を追うようなイメージがあります。ところがアフリカの製造現場でみられる徒弟制度では参加動機がまばらで、副業をしたり、複数の製造作業場を行き来したり、離職してしまうことがあります。それらを単に帰属意識がないであったり、やる気がなかったりと片付けるのではなく、日常の中で、「何を受け取ってそっちにいったの」ということを見ていきたいとおもっています。「何をどう受け取ったか」「なぜそう受け取ったか」「どう考えたか」という、コミュニケーションの受け手の論理から考えを膨らませたいと思っています。

-アフリカを研究対象としたきっかけは何ですか?

大学院に入る前、エイズ孤児の支援をするNPOが主催するスタディーツアーでウガンダに行きました。研究ではなく現地の体験という形での訪問に過ぎませんでしたが、そこでウガンダという国に興味を持ち始めました。それがきっかけで今も研究を続けています。

-アフリカという地域の特色を教えてください

私が研究対象としているウガンダの金属加工業零細企業では、模倣が多く見られます。親方の背中を見て学ぶような徒弟制でよく見られる見習いの模倣や、他の作業場の製品デザインの模倣をよく見かけます。それらはまるまる「パクる」のでは、他の労働者から非難されるため、部分的な模倣や少しだけアレンジをしていくことをして、オリジナリティを表出しています。このような模倣からオリジナリティを製作するということに興味をもっています。労働者たちは、見たものをそのまま転用するのではなく、そこに自らの解釈を重ね合わせていくような受け手のダイナミクスがみていて面白いです。自分が作ったデザインが他人に模倣されてしまう不安がある一方で、その不安定さを楽しむようなところもあり、そのコミュニケーションを掘り下げたいと思っています。コミュニケーションによる「人のつながり」を市場経済に差し込むのが上手い点に、僕は関心があり、まだうまくは言えないのですが、特有の価値形成の仕方をどうにか言語化したいとおもっています。

-それはどんな特徴があるのでしょうか?

社会における交換には贈与交換と等価交換があり、「贈与交換」は非対称な関係や等価値でない人格的な交換をとして、市場経済の原理としての「等価交換」と切り離した議論が見られますが、実際は、それら二つは同じ交換の中に両立していると考えています。市場経済の原理は等価交換を原則としますが、購入者が販売者に「恩」を感じた時、または「あの人は優しい人だ」といった印象をもつとき、その購入者が常連になったり、他のお客さんを紹介したりします。サービスの受け手である購入者によって売買価格を超えた価値が付加されます。逆に売り手が「いつも来てくれるな」と受け取ればおまけをすることもあったりしまする。等価交換なら金額だけやり取りすれば良いところ、「恩を返したい」という関係が生じることで付加価値が形成される。等価交換をしているつもりが、人によっては市場の価値以外にも目を向けているというようなことを「常連」をキーワードに、これから研究したいと思っています。

-私たちにとっても身近な話題なんですね

市場交換の論理だけで仕事をすると、誰がやっても同じですから「これは本当の自分じゃないんだ」感、労働からの疎外が起こります。
これを自分の経験と地続きで考えてみます。「Hot Issues of Skills Development」は論文を調査・要約した記事を日英で添削していただけるので、内容・論文力・英語力を学ぶことができます。若手育成には絶好の機会で、日々とても感謝しています。そしいずれはこの価値を次の人に伝えたいと思っています。しかし、その業務や方法論を言葉で説明しても、絶対に自分が感じている通りには伝わらない。受け手が「これは“やらないといけないこと”なんだな」ととらえたとき、タスクとしての形になった瞬間に疎外を生む。それを回避する方法を考えなければいけないなと思っています。
「等価交換内での贈与の発生」はその解決のヒントになるでしょう。コミュニケーションを続けることで発信-受信の過程で起こるファジーな処理が疎外を防ぎ、人間関係を伴って仕事をすることで「自分自身として」仕事ができると考えられます。

-SKYプロジェクトについて教えてください

SKYを外から見ると「技能評価を計量的に分析するプロジェクト」だと認識されるかもしれませんが、実際はアフリカでのテスト理論の実践もあれば、生産現場改善の知見、質的研究や行動理解による概念研究など、様々な関心と方法があります。実直に統計だけを行うプロジェクトではない、研究者それぞれの興味関心を実践化するプロジェクトだということを広く知ってもらいたいです。

-これからプロジェクトで何に取り組んでいきたいですか?

プロジェクトに参加したいという人が出てくれると嬉しいです。蓄積したデータの活用や、概念研究など、方法はさまざまであれ、趣旨と倫理から離れなければ、個々の興味関心やメリットを見つけだすことに寛容で、独自性を自然と受け入れてくれるプロジェクトだと思います。そういう多様なアプローチから成る物事の進め方が自分自身も好きですし、その価値をこのホームページで伝えていきたいと思っています。

山崎裕次郎

専門:アフリカのインフォーマル・セクター研究、徒弟制による技能形成

所属:名古屋大学大学院国際開発研究科博士後期課程

経歴:2017年専修大学文学部卒業後、名古屋大学国際開発研究科博士前期課程へ進学。2019年博士前期課程修了。現在、名古屋大学国際開発研究科博士後期課程在学中。