途上国における前方後方連関 山崎裕次郎
途上国において、産業規模をどのように拡大していくかは、経済成長、雇用創出の側面から重要な課題となっています。A. ハーシュマン (1958) はこの課題に産業間の連関に着目し、産業規模拡大には、前方連関・後方連関の相互効果があると提唱しました。前方連関とは、新しく登場した産業の生産物が、他の産業に原料として供給され、他の新産業の登場が可能になる効果、後方連関は新しく登場した産業が、他の産業の原料需要を誘発し、原料供給産業の登場が可能となる効果を指しています。
Morris & Fessehaie (2014)は、付加価値のある商品ベースの産業化を、アフリカ諸国がいかに実現できるかについて、産業連関の側面から議論しています。第一次産品の豊富なアフリカにおいて、付加価値の付いた商品の生産のためには、資源の供給サイドの拡充といった後方連関、商品がグローバル・バリュー・チェーンにより、新たな商品の需要となるような前方連関について、考慮する必要があると指摘しました。その産業化のためには、双方の連関を考慮した、政策や戦略が重要であると述べています。また、現地の人々のスキルの欠如は、企業の競争力の向上、イノベーションの確立、世界クラスの製造の採用、およびサプライチェーン拡充の妨げとなることから、産業連関の実現における技能形成の重要性を指摘しています。
前方・後方連関による分析は産業発展の効率的な投資を示唆することから、アフリカ諸国でも分析に用いられています。Tesafa (2014) は、エチオピアの製造業の他の産業セクターとの前方・後方連関の相関分析をしています。前方連関については、食品、縫製、非金属産業はサービスセクターへの相関がみられ、一方で革製品産業では輸出への相関がありました。後方連関については、食品産業はサービスセクター、革製品産業では農業セクター、金属産業は輸入への相関というように、産業ごとにばらつきがみられました。各製造業の他セクターとの連関を明らかにすることで、労働市場で必要とされている部門・技能を予測する事に寄与します。
ハーシュマンの提唱した前方・後方連関を考慮することは、産業の拡大と他セクターへの波及を構造的に把握することができます。各産業ごとに他セクターとの連関を明らかにし、必要とされる人材の予測および効率的な投資についての計画を練ることで、経済成長および雇用の創出に寄与していくことが考えられます。
References:
Hirschman, A.O., 1958. The Strategy of Economic Development. Yale University Press, New Haven, CT.
Morris, M. and Fessehaie, J. (2014) “The industrialisation challenge for Africa: Towards a commodities based industrialisation path.” Journal of African Trade 1 pp. 25–36.
Tesafa, F. (2014) “Forward and backward linkage analysis of manufacturing industries in Amhara region, Ethiopia.” National Monthly Refereed Journal of Research In Science & Technology. 3. pp. 14-26.