活動報告

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【イベント報告】2月28日オンライン開催「開発途上国における産業スキル開発:教育、スキル需要と生産性」2022.03.22 山崎裕次郎 アフリカ

2月28日に国連大学とSKYプロジェクトの共催webinarワークショップ「開発途上国における産業スキル開発:教育、スキル需要と生産性」が開催されました。

本ワークショップでは、途上国の産業人材育成についてをSDGsとの関連、現在取り組むべき理由をはじめ、SKYプロジェクトで実施してきた実証的なデータをもとに報告をしていきました。また、近年重要視されるソフトスキルに関する議論や訓練についてのアイデアと今後の展望についての意見交換も行いました。

本ワークショップは、国連大学サステイナビリティ高等研究所所長山口しのぶ博士の挨拶から始まり、これまでのUNU-IASと名古屋大学SKYプロジェクトの協力関係や、知識経済とグローバル化の時代における産業スキル育成の必要性が高まっている背景について述べられました。

続く各登壇者からの発表は、UNU-IASのJonghwi Park博士から始まり、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けた技能開発および技術職業教育訓練(TVET)の役割について概説しました。持続可能な経済・社会開発におけるTVETと技能開発の重要性はますます高まっている一方、TVETセクターは、資金不足、産業界のニーズとカリキュラムのミスマッチ、技能を教えるための時代遅れの教育的アプローチなどの課題があり、これらの問題に対処するために採用された各国の事例を紹介しました。

続いて名古屋大学SKYプロジェクトのリーダー山田肖子博士の発表では、個人が身につけるスキルという切り口から開発問題を考え、スキルのミスマッチが起こるメカニズムを解き明かし、with-COVID時代のスキル開発への新たな課題にも触れながら、その所在と性質を特定するための手段を提案しました。本発表では、スキルのミスマッチには垂直的側面と水平的側面があると説明することで、TVETへの投資額を増やすだけではスキルのミスマッチは解決せず、多角的にスキルを把握し、エビデンスに基づく議論により、ギャップの本質を見極めることが重要であると指摘しました。

SKYプロジェクトメンバーの クリスチャン・オチア博士と近藤菜月博士による続く2つの発表は、SKYプロジェクトがエチオピアとガーナで行った大規模なデータ収集から得られた実際の知見が発表されました。エチオピアに関する議論では、技術職業教育訓練の教師と生徒の間で雇用可能なスキルの重要性に関する認識のギャップがあること、そしてそのようなギャップの背景にある理由について報告しました。ガーナに関する講演では、フォーマル・セクターとインフォーマル・セクターの労働者におけるスキルの役割について議論し、実践的なスキルや性格の違いが、両セクター間の賃金の違いを説明できる点を報告しました。

続くSKYプロジェクトメンバーのチャロエンシルプ・ピンマダ氏による発表では、SKYプロジェクトがどのように行動モデリングトレーニングとボードゲームを組み合わせてソフトスキル訓練モジュールを作成したかを紹介しました。

本ワークショプ内では計2回の質疑応答の時間が設けられ、オーディエンスから、中小企業と起業の間で、労働力のスキル要件は同じなのか、異なるのか?何を学ぶかを選択できる教育の自由をどのように確保するか?TVET スキーム・プログラムの中で問題解決能力を身につけることはどのように可能か?などの質問が挙げられました。

上記の質問に対する回答として、Jonghwi博士は、技能訓練に移行する前に学習者に基本的な技能を身につけさせる基礎教育の重要性を指摘しました。また、Otchia博士は、「開放性」などのソフトスキルがあれば、学習者が社会人になってからも、他人から基礎知識を教わる機会を得ることができるとも述べました。そして、SKYプロジェクトの取り組みとして、規範を押し付けるのではなく実践を通して必要なスキルに気づくようなトレーニングのアプローチを紹介しました。

本ワークショップの報告は国連大学サステイナビリティ高等研究所のWebサイトにも掲載されています。