活動報告

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ボードゲームを利用したソフトスキル研修の効果:エチオピアの裁縫労働者への準実験的研究2023.09.12 エマニュエル・エストレラード アフリカ

名古屋大学大学院国際開発研究科のSKYプロジェクトグループは、ボードゲームを用いた行動モデリングトレーニング(BMT: Behavioral Modeling Training)が、エチオピアの縫製労働者の仕事に関するソフトスキルに及ぼす影響を調査しました。ゲームを用いたBMTの結果、労働安全衛生、整理整頓、清潔さ、職場の効率性、製品の品質管理、チームワークといった仕事に関連するソフトスキルが自己申告にて30.6%向上しました。これは、今までとは異なったアプローチでのソフトスキル育成トレーニング方法を示唆しています。研究は、International Journal of Educational Development誌に掲載されました。

ソフトスキルは労働者の生産性を決定する重要な要素です。しかし、エチオピアの労働力には仕事に必要なソフトスキルが不足しています。ソフトスキルを向上させる介入は未発達であり、ほとんどのトレーニングは講義ベースで行われています。

名古屋大学大学院国際開発研究科の山田教授率いるグループは、エチオピアのカイゼン・エクセレンス・センターと協力し、JICAエチオピアの支援を受けて、ボードゲームを使ったBMTが、参加者がソフトスキルを仕事の内容に結びつけ、応用するのに役立つことを発見しました。そして、ボードゲームを用いたBMTを受けた労働者は、仕事に関するソフトスキルが著しく向上したと述べています。
本調査結果は、エチオピアの縫製労働者のソフトスキルを向上させるためには、行動学習モデルに基づき、ボードゲームを使用したトレーニングが実際に有効であることを強く示唆しています。

山田教授は、エチオピアで普及している講義ベースのトレーニングに代わるアプローチとして、ゲームベースでのトレーニングの持つ可能性に注目しています。 この研究では、職場の現実を簡略化して表現するボードゲームを使用し、BMTアプローチと組み合わせて1日のトレーニングプログラムとすることで、ソフトスキルを効果的にトレーニングするために必要なリソースを最小限に抑えられることを示しました。 また、より高いモチベーション、スキルの伝承、定着を図るために、仕事を模したリハーサルの機会をトレーニング上に組み込むことができることを実証しました。

本研究は労働訓練生が保有するソフトスキルのレベルを決定する要因も示しています。経験の浅い労働者や雇用されたばかりの労働者が、ゲームベースのトレーニングにより大きくスキルを伸ばしています。研究チームは新入社員に今回と同様の介入(トレーニングプログラム)を行い、これからの仕事に必要なソフトスキルを準備し、身につけさせることを提案しています。

管理職やライン監督者は、下級職よりも効率的でチーム志向が強いという調査結果も出ました。本研究で調査した仕事に関連するソフトスキルの5つの分野のうち、効率、チーム志向の2つが、エチオピア縫製業の管理職やライン監督者で最も重要視されていることがわかりました。本トレーニングプログラムは一般労働者のみならず、現管理者や管理者を目指す人の業務向上に役立つと思われます。

「ボードゲームを利用したソフトスキル研修の効果:エチオピアの裁縫労働者への準実験的研究」(The effects of game-based soft skills training: A quasi-experiment with Ethiopian garment workers)は、2023年6月13日付の学術誌『International Journal of Educational Development』(DOI: 10.1016/j.ijedudev.2023.102823)に掲載されました。