非認知スキルの途上国での展開

非認知スキルの途上国での展開 労働市場において認知スキルと仕事の特殊スキルにならび、非認知スキルは労働者のスキルセットの主要な1つの要素として見られており、特に現在、第四次産業革命に対応していく為には非認知スキルを育て、続きを読む

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非認知スキルの途上国での展開

労働市場において認知スキルと仕事の特殊スキルにならび、非認知スキルは労働者のスキルセットの主要な1つの要素として見られており、特に現在、第四次産業革命に対応していく為には非認知スキルを育て、変化に富む未来へ対応する柔軟性を人々が重要であると指摘されています (World Bank 2017)。非認知スキルの用法は様々ですが、認知的スキルが読み書き計算を指すのに対し(Green, 2011)、非認知スキルで焦点が向けられているのは、読み書き計算などの認知スキルでは測定できない思考、感情、行動のパターンを含む特性を指し(Borghans et al. 2008)、誠実さや忍耐力、協調性など、様々な能力を対象としています (World Bank 2017)。

 非認知スキルが個人の教育達成、収入向上、労働市場への参画において重要な要素であることが様々な研究で明らかにされています。非認知スキルはより高い収入と強く相関関係を持ち、賃金を向上させることが指摘されています(Heckman et al., 2006)。Mueller and Plug (2006) によると、非認知スキルの収入への影響は認知的スキルと同等の効果があると言われています。また、非認知スキルを明らかにすることで、労働市場の成果を予測することに寄与することも指摘されています(Borghans et al., 2008)。近年では、長期にわたるゴールを追求する忍耐強さを指すグリットと呼ばれる要素が注目されています。教育達成度と学業成績がグリッドとの相関がIQよりも高いことが指摘され(Duckworth et al. 2014)、世界銀行のSkills Towards Employability and Productivity (STEP) Skills Measurement によると、貧困女性のエンパワーメントにおいて、このグリットが重要な要素であることを明らかにしました (World Bank 2017)。

 非認知スキルに力を入れているのは先進国のみならず、近年では様々な国で取り組まれています。メキシコは、青年期の発達における重要な要素として社会感情的スキルを高めるために、中等教育においてConstruye-Tプログラムを導入し、10〜12年生の生徒に対して社会感情スキルを伸ばす一連のアクティビティを実施しています。また、ザンビアでは、セルフマネジメント、他者との関係、イノベーション、起業家精神、生産性、社会心理的スキルを含んだ新しいカリキュラムを推進し、非認知スキルの育成に力を入れています (Mulenga et al. 2019)。

 このような取り組みがある中、課題も指摘されています。ザンビアにおける新しいカリキュラムは既存のものに比べ、コストがかかる一方、政府からの財政の増加がないため、教員の養成を含む新たなカリキュラムにかかるコストにおいて課題が残っています (Mulenga et al. 2019)。また非認知スキルの測定方法にも課題があり、認知的スキルのように標準化されたテストでは測定がしづらい点や、各国の文化に強く影響する為、画一的な測定には今後の研究が必要とされています (Zhou 2016)。このような課題に取り組みつつ、途上国においても非認知的スキルの養成が促進していくことが今後一層注目されていきます。

(山崎裕次郎)

References:

Borghans, L., Duckworth, A. L., Heckman, J. J., and Ter Weel, B. (2008). The economics and
psychology of personality traits. Journal of Human Resources,43(4), 972-1059.
Duckworth, A. L., Peterson, C., Matthews, M. D., and Kelly, D. R. (2007). Grit: Perseverance and Passion for Long-Term Goals. Journal of Personality and Social Psychology, 92(6):1087.

Green, F. (2011). What is skill? An inter-disciplinary synthesis. Centre for Learning and Life Changes in Knowledge Economies and Societies.
Heckman, J. J. J., Stixrud, J., and Urzua, S. (2006). The Effects of Cognitive and Noncognitive Abilities on Labor Market Outcomes and Social Behavior. Journal of Labor Economics, 24(3):411–482.
Mueller, G. and Plug, E. (2006). Estimating the effect of personality on male and female earnings. Industrial & Labor Relations Review, 60(1):3–22.
Mulenga, I. M. and Kabombwe ,Y. M. (2019) A Competency-Based Curriculum for Zambian Primary and Secondary Schools: Learning from Theory and some Countries around the World. International Journal of Education and Research Vol. 7 (2): 117-130.

World Bank (2017) Non-cognitive skills: What are they and why should we care? World Bank Retrived from https://blogs.worldbank.org/education/non-cognitive-skills-what-are-they-and-why-should-we-care
Zhou, K. (2016) Non-cognitive skills: Definitions, measurement and malleability. Background paper prepared for the 2016 Global Education Monitoring Report Education for people and planet: Creating sustainable futures for all. UNESCO.